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心理的瑕疵による不動産価格の低下(続編)

こんにちは。文京区本郷で「一戸建て・土地・マンション」などの不動産の買取・売却・販売を専門に行っている株式会社ASUeのスタッフです。

前回の記事では、心理的瑕疵による不動産収入の損失について、基本的な知識をご紹介しました。今回は、その判例をいくつかご紹介したいと思います。
まず、裁判で争われる論点として、予想できるのは次の二点です。
① 借主の相続人の責任:善管注意義務違反による債務不履行にあたるのか否か
② 保証人の責任:損害賠償債務が連帯保証の範囲に含まれるのかどうか
「入居者の自殺防止は義務だったのか」「入居者の自殺による損害賠償は保証内容に含まれていたといえるのか」とも言い換えられると思います。
これらの疑問に対して明確に答える法律は今のところありません。そのため、それぞれの事例に応じて一見正反対の判決が下されています。
裁判例⑴
〈概要〉借上社宅にて従業員が自殺。貸主は、賃借人に対して債務不履行による損害賠償を請求した。東京地裁は、賃料の損失分2年分の支払いを認めた。
〈解説〉賃借人の責任として「善管注意義務」がありますが、心理的に嫌悪すべき事由を発生させないように注意する義務があるということです。つまり、心理的瑕疵にあたる入居者の自殺を、この賃借人(=会社)は防止する義務があったというわけです。入居者の自殺によって賃料収入が減ったといえるので、賃借人に対しての請求が認められました。
ちなみに、この物件に関しては2年程度で瑕疵が希釈されると考えられています。というのも、この物件は人口の多い場所に位置し、回転の速い単身用の賃貸アパートです。そのためすぐに入居者が入れ替わり、説明義務もなくなります。そうなれば、賃料収入の損失は2年分と考えれば十分だとみなされることになります。
裁判例⑵
〈概要〉借上社宅で従業員が自殺。その建物の撤去と更地の売買が決まっていたが、この事故により土地の購入申し込みが撤回された。その後、もとの売買価格よりも安い値段で買い手が見つかった。土地の所有者は得られるはずだった土地の価格との差額を請求したが、東京地裁はその請求を退けた。
〈解説〉たしかに、土地の購入希望者は従業員の自殺をきっかけに申込を撤回しました。しかし、安くても土地は売却できたわけであるし、自殺によって直接的に価値が下がるのは建物です。この件においては、土地価格の低下について、建物価格の低下と同じように扱うことはできないと考えられました。
また、亡くなった従業員については自殺の兆候もなく、使用者が自殺を防止する義務まで負うのは過重負担であるとされています。この点は、裁判例⑴とは正反対に解釈されています。
(参考文献;宮崎裕二弁護士他著「心理的瑕疵の裁判例と評価」プログレス、2019年)
このように、一言で「心理的瑕疵」といっても様々な事情や条件があり、既定の法律や前例だけでは解決できないものもあります。
法律は人間が長年かけて決めたものだけれども、それぞれの事情にきめ細かく寄り添うことはほぼ不可能といっても過言ではありません。言葉は人によって解釈も異なりますし、契約書を読む際に、相手方とイメージをすり合わせたり、やりすぎというくらい場合の想定をすることが必要だとわかります。
当社ASUeでは、住まいにまつわるお悩みについて幅広くご相談を承っております。是非お気軽にお問い合わせください。

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